音楽コラム<vol.56> 寄稿:わかばやし
皆様こんにちは。
前回のコラムでなんとかクビを免れて2本目のコラムを執筆中のわかばやしと申します。
今回もお付き合いをよろしくお願い致します。
今回ご紹介するのは、ハワイアンラップスティールギター界の黎明期の名手「Sam Ku West」です。
ごちゃごちゃ書く前に早速音源を。
・Sam Ku West - Waialae
Sam Ku West氏は前回ご紹介したJoseph Kekukuの次の世代、1907年にハワイのホノルルで生まれ、1930年に亡くなられた非常に短命なギタリストです。
録音も1926年~1927年までの期間に27曲と、後世に残る記録も少ないギタリストでした。
使用していた楽器は、残っている写真から初期の頃は通常のアコースティックギター、後半になると当時出始めたばかりのナショナル・トライコーン・スクウェアネックのモデルだったと推測されます。
彼より後の世代、1930年代に入ると速い曲を凄いテクニックでトリッキーに演奏する熱いスタイルのプレイヤーが登場してきますが、彼の場合はスピードやテクニカルなフレーズよりも曲のメロディを重視した牧歌的な音使いで、春のうたた寝のお共に最適な「これぞヒーリングミュージック!」と言った点が特徴的です。
実際、彼のベストアルバムを聴いていると途中で寝落ちしてしまい、1枚通して聴けた試しがありません…。
活動期間が短かったのにも関わらず、ハワイのみならずアメリカ、シンガポールなどの東南アジア諸国、ヨーロッパ各地で演奏を行い、当時のイギリス国王ジョージ5世からはオーストリア出身の著名なヴァイオリニスト「フリッツ・クライスラー」になぞらえて「スティールギター界のクライスラー」と呼ばれるほどの活躍を見せていたそうです。
第二次世界大戦前のスティールギターの録音集を聴いていると、意外なことにハワイ人の演奏だけでなくフランス人による演奏も多々あることから、彼の活躍によってスティールギターがヨーロッパ各地にも広がっていったことが伺えます。
何かと殺伐とした世の中ではありますが、Sam Ku Westの流麗な演奏をBGMにうららかな春の日差しのもとでのんびりと昼寝や散歩などを楽しんでみるのはいかがでしょうか?
・Sam Ku West - Aloha Oe