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音楽コラム<vol.24> 寄稿:デビッド近藤
「音をいちばん集めた、愛するギタリスト Grant Green」・・・BluesからJazzへの案内人
僕はBluesをなぜ演奏するのか?
僕は高松ローカルだが、デビッド近藤という名前でギタリストとして活動している。
やっている音楽はズバリ「Blues」。
言わずと知られたアメリカのRoots 音楽である。
しかし僕は日本人で、アメリカンルーツなどはないので、Bluesをこれからどこまで極めたとしても、「本物を真似ている者」には変わりない。
「どうして日本人でBluesを演奏するのか?」と聞かれても「好きだから」としか言いようがない。
それが自分のいちばん自然な姿であり、やりたいからだ。
しかし、意外なことであるが、これまで一番作品を買い集め、熱心に一音、一音、いわゆるコピーしたギタリストはBluesギタリストではなく、ブルーノートの看板ギタリストだったGrant Green(グラントグリーン)なのである。
20代前半、ロックンロールからブルースに傾倒して、ギターで弾いて覚えようとしたのは、BBキングから、バディガイ~最も熱心に弾こうとしたのはアルバートキングのギターだった。
しかし、それらはサウンド全体の音色、雰囲気、全体的なフィーリングを盗もうとしていたように思う。ひとつひとつの音を音符としてはとらえていなかったのである。
20代の終わりにグラントグリーンの(Grant,s First Stand)というオルガンジャズのアルバムを聴いて、どっぷりそのサウンドにはまってしまったのである。
グラントのギターとベイビーフェイスウィレットのオルガンの火の出るようなテンションの音源にすっかりノックアウトされてしまった思いがある。
まず、それまでBluesに親しんできた僕の耳には自然と入ってきたブルース・ペンタトニック音階で基本は構成されているグラントグリーンのギター。しかし、ビバップのフレーズでチェンジがきっちり構成されていて、しかも、凄く自由な感じは、当時の僕には魅力的だった。
その、自由な感じの正体が、スイング感、強烈なまでのグルーヴ、寸分のブレもない出音のタイム感であることは、何年も聴いて、弾いて、わかってきたが、当時の僕はわかっていなかった。
まず、音階はブルースだが、奏法、リズムコントロール、音色は紛れもないJazzであるグリーンのギター。しかし、音がマイルドでウォームなジャズギターの音色とは対照的な、パリッとしてキラッとしたトーンがまた魅力的だった。たぶん、ジョージベンソンはグリーンの影響が大きいと思う。
そして、真似しようとして改めて分かるグリーンの凄すぎるところは、フレーズを一音一音採譜して同じに弾いても、絶対「同じように聴こえない」のである・・・
フレーズ自体はシンプルでも、絶妙のタイミングで音を出していて、決して同じに弾いても、同じニュアンスにはならない・・・
これには何年も参った思いがある。
しかし、ギターや音楽の専門的な知識がなくても、グラントグリーンの音楽の素晴らしさは、
・シンプルで分かりやすい
・とりあげる楽曲も有名なものが多く分かりやすい
・70年代に入ってからのものはリズムが更に強烈
・いつも同じギターフレーズが聴けて安心感がある
・音楽全体がおおらかな愛に溢れている
・基本インストゥルメンタルなので言葉の壁がない
などなど、素晴らしさは尽きない。
そして、Bluesを演奏する立場の僕のような人間がジャズを掘り下げて行く時に、ある意味、グラントグリーンに尽きるところがある。おそらくグリーン自身もブルースやリズム&ブルースからJazzを身に付けていったから、そうなるのだと思う。
BluesとJazzは同じではない。
しかし、ブルースはロック、ジャズ、ファンク、など、多くの音楽の共通項である。
だから、初対面ジャムセッションはだいたいがブルースになる。
絵をかくように表現できるからジャムの多くがブルースになる。
これからの人生でも、時々、多分立ち止まり、グリーンを聴いていると思う。
隣りにいそうな、そして、何マイルも離れたギタリスト「グラントグリーン」を。