音楽コラム<vol.54> 寄稿:デビッド近藤

Music&Live RUFFHOUSE

2022/05/13 16:00

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「絵画のような音楽家 マイルスデイビス」


5月の音楽コラムは、「マイルスデイビス」のことを書いてみたい。

僕がマイルスデイビスを聴いたきっかけは、19才の時に観たチャーリーパーカーの映画、「バード」がきっかけだったと記憶している。チャーリーパーカーのダイヤルのアルバムを、神戸のレコード店で見つけて聴いたのだが、正直、「古いジャズという音楽は、捉えどころがないな〰️」といった印象で、とっつきにくかった思い出がある。

そのレコードに、マイルスデイビスのクレジットがあり、名前は知っていたので、印象に残った。その数年前に「ユア アンダーアレスト」というアルバムで、マイケルジャクソンや、シンディローパーのカバーをやっているのを、音楽雑誌で見たからである。そんな時、80年代の最後の年だったと記憶しているが、グラミー賞の放送でマイルスデイビスを観た。アルバムジャケットを撮影した日本人がノミネートされたアルバム「TUTU」から、「アマンドラ」という曲を、グラミー賞のステージで演奏しているのを聴いて、聴き入ってしまった僕がいた。

ものすごい緊張感だった演奏を覚えている。

10代最後のブルースを知ったばかりの僕には、音楽の内容は理解できていなかったが、聴いたことのない、シリアスで緊張感のある演奏は今でも思い出せる。

上記の体験から、マイルスデイビスのアルバムを聴くようになっていった。

「カインドオブブルー」、「ラウンドミッドナイト」

「フォア&モア」、「ウォーカキン」、「マイルストーン」・・。マイルスの映画も観た。

「ディンゴ」という、マイルスデイビスがほぼ等身大のミスタークロスという人物を演じた映画だったが、何度も観た。とにかく魅力的だった。マイルスデイビスは音楽はもちろん、「絵になる」のである。

それから、20代の半ばには自伝も読んだ。50年代のバードやガレスピーに憧れて、追いかけた時代の記録が特におもしろく、自伝を読んで、セロニアスモンクやウィントンマルサリスを知った。

マイルスがブルースが大好きなことが分かり、嬉しく思ったのも自伝を読んでいる時だった。

「オールブルース」を書いたきっかけは「遠い昔、生まれた町で、演奏されたブルースを道で聴いた」記憶からだそうで、有名になってからも、シカゴではマディウォーターズを聴きに、クラブに足を運んだことも書かれていたし、BBキングも自伝には登場するし、マイルスはジミヘンドリックス、BBをバンドに誘いたかったことを知ったり、とにかく引き込まれて読んだ記憶が、いまでも蘇ってくる。

僕がマイルスデイビスに憧れるのは、音楽的にはロックスターに憧れを抱く感覚に似ているというか、同じだと思う。とにかく、音楽を演じる感覚、絵を描くような、ビジョンでバンドはもちろん、全てをコントロールする感覚が好きだ。

そして、彼のトランペットの演奏スタイルは、ジャズの歴史を何度か変えたにもかかわらず、極めてシンプルだと思う。常に「歌」があり、フォア&モアのような、ハイテンポの演奏の時にも、歌があり、シンプルだ。そこが、ブルースを続けている僕にはたまらない・・。その「歌」を様々な、アイデアのキャンパスに絵描きが描くような感覚で、作品にしていく。そうだ、僕はマイルスが好きなのだ。


最後に、19才の時テレビで観たグラミー賞で、マイルスを紹介した、バービーハンコックの言葉を(記憶だけん頼りに書くので、一語一句同じかはわからない)→「彼は常に、僕らの何マイルも先を行きます!マイルスデイビス‼️」


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