音楽コラム<vol.83> 寄稿:blackriver_k5
「モダン・ブルースに開眼」
前回からの続きで、ブルースの中でも50年代のシカゴものばかり聴いていた頃は、派手なスクイーズ・ギターも避け、ホーンセクションの入った演奏なんか聴くものか!的な状況で、それはひどく偏った状態でした。
そんな折の1988年に、ボビー“ブルー”ブランド が来日しました。
ボビー“ブルー”ブランドは、ブルースでは珍しい、楽器を演奏しないボーカルのみの人で、「Two Steps from the Blues」「Here's the Man」の2枚のLPは所有していましたが、有名なレコードとはいえ、当時は「なんじゃこりゃ?」みたいな感じであまり聴いてはいませんでした。
でも、せっかく東京にいて、観る機会があるのだから、ということで、今はもうありませんが、渋谷LIVE INNへ。そんな感じで赴いた訳ですが、それはそれは素晴らしいコンサートを体験できたのでした。
はじめて、歌だけで勝負するあまりのカッコよさに感動するとともに、特にこの時のギターは職人のウエイン・ベネットが同行しておりましたし、ホーンセクションの音の分厚さはもちろん、全体のバンドサウンドに圧倒され完全にノックアウト状態となってしまいました。
その後は、自分の所有するレコードの聴き方もガラリと変わり、今まで聴こえてなかった音や、空気感をしっかりと味わえるようになったと思います。
やはり有名なものにはそれ相応の中身が伴っており、それを理解せずに意見したりすることは非常に格好悪いものだとも感じましたし、この時、いわゆるモダン・ブルースに開眼したことで、またひとつ“ブルース”という音楽を好きになっていくのでした。
ここで、ボビー“ブルー”ブランドのシャウト一発!「Two Steps from the Blues」からLittle Boy Blue(1958)を。
続いて「Here's the Man」からホーンがバリバリのBlues In The Night(1962)を。
いやぁカッコいいですね!
次に、ブルース・ボーカリストで絶対はずせないのが、リトル“ジュニア”パーカーです。
ボビー“ブルー”ブランドは、かつてこの人の運転手をしていたらしいですが、個人的には、ブルースの歌ものでは最も好きなシンガー&ハーピストで、何とも言えない温か味に体を委ねてしまいます。
ここでは、In The Dark(1961)を。ホーンセクションに絡む生ハープがこれまた素晴らしいですね。
以上3曲ともに、メンフィスのデューク・レコードでの録音ですが、当時のブラック・コミュニティでの演奏は、それは凄かったのだろうと思います。
そんなことも想像しただけでもゾクゾクしますが、最後は、ボビー“ブルー”ブランドのMembers Only(1985)を。