
音楽コラム<vol.103> 寄稿:Eloiseカポノ
コラムCross Over 21 第1夜 2026.5.7
みなさん、お元気ですか?カポノです。
今回から、ラジオ連動型のコラムを隔週に掲載させていただくことになりました。最後までお読みいただき、そしてぜひ、ラジオの方も、無料のリアルタイム放送と有料会員のアーカイブ放送もお聴きいただければ幸いです。
2026年5月7日 第1夜
GW明け最初の放送は、リスナー、パーソナリティのリクエストによる構成となりました。
お掛けした曲は、
1. Biggest Part Of Me / Ambrosia
2. The Style Council / Shout To The Top
3. Vince Gill / Guitar Slinger
4. Rod Stewart / That’s What Friends Are For
5. Roberta Flack / Killing Me Softly With His Song
6. Phil Collins / Another Day In Paradise
7. Bobby Caldwell / Fly Me To The Moon
8. Everything But The Girl / Alison
9. Norah Jones / Don’t Know Why
10. 山弦/ Coast To Coast
11. Bruce Hibbard / Never Turnin' Back
バラエティに富んだリクエスト大会となりましたが、皆様、ある「仕掛け」にお気づきでしょうか?
実は1曲目はアメリカ、2曲目はイギリス、3曲目はアメリカ……といった具合に、9曲目まで交互に国を入れ替える構成にしてみたんです。最後は日本、そしてアメリカで締めくくりました。
こうして文字面にしてみれば「おや、法則が?」と気づく方もいらっしゃるかもしれませんが、放送を聴いているだけではまず分からないでしょう(笑)。はっきり言って、選曲者の自己満足、いわば「密かな愉しみ」ですね。
さて、今回のラインナップで純粋にAORと呼べるのは、1曲目にお届けした Ambrosia の 「Biggest Part Of Me」 だけです。これを見抜けたなら、貴方は相当なミュージック・マニアと言えるでしょう。
「おや?」と思われたそこの貴方!
そう、Bobby Caldwell(ボビー・コールドウェル)はどうした、と思われましたよね。
彼は「Mr. AOR」と称えられた伝説的な存在です。「過去形」でお話しするのは心苦しいのですが、誤解のないようお伝えすると、彼は2023年3月、71歳という若さで惜しまれつつこの世を去りました。しかし、過去・現在・未来を通じ、彼を凌ぐAORアーティストは存在しません。彼は今この瞬間も、永遠に「Mr. AOR」であり続けるお方なのです。
今回、私カポノが自らリクエストしたのは、7曲目にお掛けした彼の 「Fly Me To The Moon」 でした。
彼がフランク・シナトラを敬愛していたという話を、ボビーの親友である Tad Iwaki さんから先日伺ったばかりだったので、迷わず選曲しました。
この曲が収録されている2014年発売のアルバム 『After Dark』 は、彼の代表的なAOR作品とは少し趣が異なり、ジャズ・スタンダードを中心とした「夜」のための大人なヴォーカル・アルバムです。
名曲「What You Won’t Do for Love(風のシルエット)」のような洗練されたAORサウンドを期待すると、少し意外に感じるかもしれません。
アルバムでは、
“Fly Me to the Moon”
“I Only Have Eyes for You”
“Come Fly with Me”
“In the Wee Small Hours of the Morning”
といったスタンダード・ナンバーを、落ち着いたスウィングやバラードで聴かせてくれます。
発表当時、ボビーは60代。
若い頃の艶やかさに加え、渋み、温かみ、そして包容力が増しており、まるで深夜のバーで独り耳を傾けているような贅沢な気分に浸れます。
タイトルの「After Dark(夜更け)」が示す通り、照明を落とした部屋でウイスキーやワインを片手に、あるいは雨の夜のドライブに……そんなシーンにぴったりな一枚です。
特におすすめなのは、自身の代表曲をジャズ・アレンジでセルフカバーした 「What You Won’t Do for Love (After Dark)」。オリジナルとは一味違う、しっとりとした大人の表情を堪能できます。
フランク・シナトラやトニー・ベネットのようなジャズ・ヴォーカルがお好きな方には、特におすすめしたい作品です。派手なヒット曲集ではありませんが、ボビー・コールドウェルの圧倒的な歌唱力と大人の色気をじっくりと味わえる、極上の仕上がりになっています。
さて、David近藤さんのリクエストは、Rod Stewart のThat’s What Friends Are For(愛のハーモニー)
『僕がこの曲を選んだのは、バートバカラックの中で最も好きなナンバーという理由です。歌詞が素晴らしけ、メロディも美しい。大切な人と聴いてみてください。』とのコメントが!
この曲は、バート・バカラックとキャロル・ベイヤーのコンビによって1982年のアメリカ映画「ラブ IN ニューヨーク」(原題:Night Shift)のエンディングテーマとして書き下ろされ、ロッド・スチュワートが優しくハスキーに歌い上げました。
有名なのは、ディオンヌ・ワーウィックがスティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、グラディス・ナイトと豪華に歌った1985年のチャリティ・バージョンです。
1980年代半ば、アメリカではエイズ(AIDS)が社会問題化していましたが、当時はまだ偏見が強く、公的な支援も追いついていない状況でした。
そこで立ち上がったのがディオンヌ・ワーウィックです。彼女はエイズの研究や患者支援の資金(米国エイズ研究財団:amfAR)を集めるためのチャリティ・シングルを企画します。その際、旧知の仲だった作曲家のバート・バカラックが、「ロッドに書いたあの曲(That's What Friends Are For)が、このプロジェクトのメッセージにぴったりだ」と提案したのです。ディオンヌはこの提案を受け入れ、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、グラディス・ナイトという錚々たるメンバーを集めて「ディオンヌ&フレンズ」を結成。この曲をカバーしました。
“Keep smiling, keep shining / Knowing you can always count on me, for sure / That's what friends are for”
(笑顔を絶やさず、輝き続けて。いつでも私を頼っていいんだから。だって、そのために友達がいるんだもの)
映画のために書かれたこの優しい歌詞が、エイズという病に苦しみ、社会から孤立しがちだった患者たちへ向けて「私たちは見捨てない、寄り添う友人がここにいる」という強い連帯のメッセージへと見事に昇華されました。
結果として、ディオンヌ版は全米1位の大ヒットを記録し、数百万ドルもの資金がエイズ研究や支援のために寄付されることになったのです。
実は、デビッドさん、ロッドさんのヴァージョンよりディオンヌ&フレンズのヴァージョンが好きとのことでした(笑)
